築102年の木造住宅をよみがえらせる
家づくりは楽しい。
人が住む場所をつくるのは本当にいい仕事だ。
今回は自然の美しい風景を活かした家づくりが得意の一級建築士、不破博志氏とともに施工した物件。
施主様はデザイナーをされている方で、こだわりが満載だ。
庭にはこんな木が。樹齢何年だろう。楽しみだ。
木から”もらう”暮らしの提案
128段の石段を登ったところにこの物件は立っている。
築年数は102年、ほとんどの部分を一度解体し、構造計算をして再生させるのだ。
私が大工として世の中に伝えていきたいこと、それは「木から“もらう”暮らしの提案」だ。
今回のプロジェクトは102年前に使われた木を活かすことが一つのテーマとなっている。
古い木と新しい施主様が出会い、一緒に新しい生活を作っていく。
その木たちから今までの歴史だったり、この土地の空気感だったり、ぬくもりだったり、沢山もらって欲しい。
まずは解体
ドンドコ解体していく。
ほこりまみれになりながら、102年の歴史をたどっていく。
「この木は使える」「この木はご苦労様でした」一つ一つの木をみながら決めていく。
古い木こそ二つとないデザイン性を持っている。
新しい家の様々な箇所で活躍してくれそうだ。
自然素材をふんだんに
木材を活かす自然な素材はたくさんある。
土、炭、溶岩石、竹、和紙、藁、花、草、等々。
今回はそれらをふんだんに使う。
すべて土に還る素材たちだ。
風を通し、湿気を調節し、夏に涼しく、冬は温かい。
自然が作り出す素材は本当に優秀だ。
2500年以上前の神代杉を使ったテーブル
今回の主役はこのテーブルかも知れない。
材木問屋で探しても滅多にお目にかかれない神代杉。施主様が一目ぼれした逸品だ。
水中、または土中にうずもれて、長い年月を過ごした杉材、昔、火山灰の中に埋没したものといわれている。
材の色は青黒く、木目は細やかで美しい。4メートル近くもあり、厚みも60ミリ、おそらく100キロを超える大きなものだ。
これをテーブルに活かす。存在感が半端ない。まさにこれからの暮らしの中心となるだろう。
ここで、語らい、ここで食べ、ここで本を読み、ここでウトウトする。
2500年以上前のこの神代杉に、ここで暮らす施主様は、どれだけのものをもらうんだろう。
木は生き続ける
木は生き続ける。
この家は102年前に生まれ、この現代にまた生き返った。
木だからこそ生き続けることができる。
作っては捨て、新しいものを買うためにまた捨てる。
そういう時代ではもうないのかも知れない。
あるものを活かし、自然から受け取る。
昔ながらに日本人が営んできた生活をもう少し見直せることができたらと思う。
今回のプロジェクトはまさに大工冥利に尽きる。
大工は木を生き返らせることができる。
これから100年、200年と生き続けて欲しい。
私は見守ることはできないが、次の世代がこの家をつないで欲しい。